2010年08月03日

最終戦を前にして

夜、行きつけの飲み屋に出かけると、話題はモンテディオ山形のJ1昇格の行方でおおいに盛り上がっている。ほとんどサッカーには縁がないような客まで、口角に泡をためながらにわか評論家と化している。

今春ミラノに行った。僕より1日早く現地入りをしていたS君は、昼にセリエAのACミランのサッカーの試合を観て、夕方僕を迎えてくれた。食事をしにレストランに入ると、ACミランの帽子をかぶっていたS君に、店のウェイターも、隣の客も、「今日のミランのゲームは最高だったね!」と、フレンドリーに話し掛けてくる。土地柄にもよるのだろうが、地元でゲームがあったその晩は、町じゅうがサッカーの話題にあふれ、見知らぬ者同士が気楽に話ができる雰囲気であった。おかげで初めて訪れた街にも、すぐになじめることができた。

地元に応援できるスポーツチームがあるということは、幸せだ。甲子園の高校野球はもとより、サッカーやラグビーなどの全国大会でも、地元チームが出場している場合とそうでない場合とでは、テレビを見ていても熱の入り方が違う。Vリーグのバレーボールチームやプロのサッカーチームをもっている山形県民は、よその県民からしばしば羨ましがられることがある。

モンテディオのホームゲームは、今年これまでに山形市陸や鶴岡の小真木原も含めて21回行われている。僕自身決して熱狂的なサポーターではないが、ゲームにはけっこう足を運んだ。季節の良い時の観戦は、すこぶる楽しかった。緑の芝生が美しいし、ゲームを観ながら食べるおにぎりも美味い。「ケンジー!」「てっぺー!」「はしら~!!」などと大きな声をだせるのも、スタンドの応援ならではだ。日ごろの憂さも晴れ晴れとする爽快感が得られる。スタジアムに足を運ぶうちに、名前など知らないが顔見知りができ、心をひとつにして一緒に応援した。

地元のチームだから、近所のスーパーや焼肉屋などでばったり監督や選手にあったりもする。そんなときに「頑張ってね」などと声をかけたときの親近感が、またたまらない。景気低迷や不安な世界情勢、あるいは妙にぎすぎすした人間関係など暗い社会とは隔絶した、スポーツを通してのさわやかな交流が、僕らの生活の中にできつつある。地元チームを無心で応援できる喜びが、気の利いた夕飯のおかずが一品添えられたように家族や職場、友達の間でのいい存在となっている。

J1昇格争いのいま、全国版のニュースでも取り上げられ、モンテディオはますます注目されている。昇格を切に望むところだが、結果がいかなる場合でも、僕たちは地元にプロのサッカーチームを持っていることを誇りにしたい。文翔館やテルサに音楽のコンサートを聞きに行くように、美術館に西洋絵画を見に行くように、今年最後のゲームを楽しみたい。

01.11.14.

【これをベースにした文章が11月17日付の朝日新聞に掲載されました↓】
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投稿者 takagi : 12:52 | コメント (0)