« 「テンポラリークラウン」 | メイン | 「歯内療法」 »

2010年08月03日

「審美歯科」

●月●日

 僕は、コ・ギャルの間で流行っているプリント倶楽部(略してプ
リクラ)にはまっている。今日も女子高生に混じってプリクラを撮
るためにゲームセンターに並んだ。
 さすがにひとりでは照れくさいので、スタッフの女の子を誘って
撮りに行ったのだが、「先生ちょっとここで並んで待っててくださ
い。私たちちょっと UFOキャッチャーやってきますから」と、
僕は女子高生の列に置き去りにされた。 

 説明は不要と思うが、世間知らずの堅い御仁のために解説すると、
プリクラというのは、証明書などに貼るための3分間写真みたいな
もので、デジタルカメラで自分の顔写真を撮るのだが、写真にはメッ
セージや飾りのフレームが写し込める。そのメッセージやフレームが
季節によっていろいろなものが選択でき、しかもお茶目なものが多い。
 キティちゃんやお猿のモン吉君などのキャラクターも一緒に写し込
めるものもあって、女子高生に限らず、四十過ぎのおっさんにも十分
楽しめる。
 うちの技工士さんだって2児の父親だが、どらえもんと写っている
プリクラを撮って衛生士たちにうらやましがられていた。写真は切手
くらいの大きさで16枚が1シートになってすぐにプリントアウトされ
てくる。しかも裏面がシールになっているのでどこにでも貼れる。
 携帯電話や手帳、名刺などに貼って使える。友達同士交換してコミ
ュニケーションのツールとして今、爆発しているのだ。

 これまで、日本人は写真に撮られるときには、旅行のスナップ写真
も証明書の写真も、結婚式の写真もみんな同じで一様に口を閉じ、
神妙な顔をしたものがほとんどだったように思える。せいぜいぶっ
きらぼうに指でVサインをしているくらいなものだったのが、プリ
クラによって表情のある顔写真が巷で多くみられるようになった。
 プリクラの機械の側にはおびただしい数の撮影済みのシールが貼
ってある。みんなにこやかに写っていて、他人の写真を見ていても
楽しい。でも、気になったのは近頃の女子高生はみんな顎が尖って
いて、歯並びが悪い。
 やっぱり日本人は、歯を見せない方がよいのだろうか。
 
●月●日

 近頃では山形のような地方でも患者さんの審美に関する欲求は高
くなってきており、補綴に際しては「白ければ良い」だけでは済ま
なくなってきた。周りの歯との色調や形態のマッチはもとより、唇
の膨らみ加減やスマイルラインなど患者さんからの要求が厳しい。
 上顎の6前歯を治療している初老の女性Iさんも、なかなか難し
い人だ。もともと叢生だったのを抜髄をしてメタルコアで歯軸を変
え、テンポラリークラウンで歯列を整えてきた。いよいよファイナ
ルに移行するという段階で、患者さんは「治療前と顔が違う」とク
レームをつけてきた。
 歯列を整えたから若干の口唇の膨らみがでてきたせいかもしれな
い。歯列そのものは悪くないと思う。問題は口唇とのバランスだろ
うと、調整することにした。 
 参考にしたいからと、患者さんに昔の写真を何枚か持ってきても
らった。見てみるとすべて口を真一文字に閉じて、口輪筋を相当に
緊張させているものばかりだ。歯列にコンプレックスを持っていた
せいか、どの写真も歯は見えない。口唇は緊張しているので薄く見
える。
 歯列が整った現在は、ちょっとスマイルすればいい形で前歯の切
縁が見えるはずなのだが、どうもIさんはスマイルが下手だ。リッ
プインプレッションを採る際にもあんまり口唇を横に広げるものだ
から漫画のオバQのようにしか採れない。
”ウイスキー”と言うときの口をしてIさんに「こんな風に笑って
みて」というのだが、ひきつってうまくできない。終いには、Iさ
んも、僕も、傍らの衛生士もみんな涙目になりながら必死に「ニー」
っと無理に笑顔を作っている。

 スマイルというのは「苦笑い」だということがわかった。


投稿者 takagi : 2010年08月03日 12:41

コメント